昨年夏から、吉野源三郎著「君たちはどう生きるか」のマンガ版および原書が売れ続けています。どこの書店でも大きく場所をとって陳列されているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。

80年前に書かれたこの本、

岩波文庫の30代の編集者が「いい本ですよね」と言ったことから、今の時代に受け入れやすいようにマンガにしたところ、

糸井重里氏がツイッターでつぶやいたのをきっかけに爆発的に売れるようになったそうで、

マンガ版はすでに130万部を超えたとか。

「ふーん」と手に取ってみて、急にはっと思い出しました。

中学1年の時に担任の先生から読むように言われて読み(もちろん当時なので原作の方)

「つまんねー」「だっせー」「ふるっ」
とさんざんバカにして友達と笑った本だったからです!

なんせ当時でも45年前の本ですから
「”えび茶色”だってー。ださーい(笑)」
「A子のセーター”えび茶色”だー!きゃはは!」
と、どーでもいい会話をしてました(バカ丸出し)。

こんな本がなんで今、売れるの?
と思って、まずマンガから読みました。

読んで驚きました!

「人間分子の関係、網目の法則」
というのが出てくるのですが、

これは、中学生で主人公のコペルくんが

粉ミルクが作られ、消費者の手に届くまで、どれだけ多くの人が関わっているのか、を知り、

粉ミルクだけでもこれだけ多くの人がつながっているのだから、
よく考えたら、世界中の人間はみなつながっているじゃないか!

と気づき、名付けた法則。

この部分だけなぜか鮮明に覚えており、社会人になってもずーーっと、ことあるごとに思い出していたのでした。

新卒で入った酒類飲料メーカーで、上司から、
「中学生に仕事の話をしてほしいと頼まれたんだけど何を話したらいいかな?」
と相談され、私のアイディアで

「◯◯(商品名)のできるまで」

と題して、原材料が海外から国内の工場に運ばれ、商品になり、パケージされてお客様のところに届くまで、いかに多くの人が関わっているのか
その物語をつくったことがあるのです。

この本のことは忘れていたけれど、
「モノを通して人間はみなつながっている」は、ずっと私の中にありました。

良い本というのは、こんな感じですっと身体の中に入って、ずっと残るものなのでしょうか。

ちょっと前のことになりますが、1/27日経新聞にこの本のことが取上げられていました。

「原作が出た時代は日中戦争が始まり、社会に不安が広がっていた。それが今の時代に重なる。」

戦争が関係あるかはわかりませんが、
私がこれまで生きてきた中で、これほどまでに人が、自分の生き方について真剣に考えている時代はなかったと思います。

「かつては教養主義と結びついた人生論のニーズがあった。だが全共闘時代以降はこういうものを『ダサい 』と冷笑する風潮が広がり以前ほど読まれなくなった。」

・・・まさしく私の若いころです!

そして、この本は、「おじさん」が主人公「コペル君」に立派な人間の生き方を説いていくという内容なのですが

「”上から目線”の語りを今の人は嫌うはずなのに、素直に受け止められているのは、刊行から80年という時間が緩衝帯になっているのかもしれない。」

時間が緩衝帯になる、に目からウロコでした。

35年前読んだ時には、ダサくて古臭いと思った設定が、今読むと逆に新鮮。

マンガ版ではなく原作を読むと、それこそ「えび茶色」をはじめ、言葉遣い方も今とかなり違っていて、「風俗」という言葉ひとつとっても意味が異なり、それが味わい深く、素直に学びになります。

そして、何度か読み返していますが、何度読んでも気づきがあり、

時代を超えて読まれる本というのは、
変わるものと変わらない大事なこと、両方から学べるのだと思いました。

今さらながら当時の担任の先生に感謝です。
つい先日亡くなられたばかりで直接は伝えられないのが残念です。
ありがとうございました。

「君たちはどう生きるか」は、35年経って知る、偉大な本でした。