研修の講師として人前に立つと、一番気になるのが、受講者のネガティブな反応です。

研修開始早々は、だいたいアウェー感満載でひとりぼっち状態で始まるものですが、これはもう、そういうものなのですっかり慣れました。

ではなく、だんだん場が温まっていくに従い、だんだん不機嫌そうになる人がいると、それはもう本当に気になって仕方なくなってきます。

きっと仕事中になにか嫌なことでもあったんだろう
彼・彼女はもともとヘンな人なんだろう、ほら、隣の人も迷惑そうな顔しているし

などと、原因を相手のせいにしようとして、見なかったことにしようとします。

でも私は、あえて、この人たちにバカ正直に突っ込んでみるということをやります。

研修のノウハウとして講師の間でよく言われることとして

「ネガティブな反応の人の方は見ないこと」
「うなづいてくれる好意的な人に向かって話しかけること」

ということがあるのですが、私はこの対応に賛成ではありません。

もちろん、少数のネガティブな人を気にしすぎて、大多数のそうでない人への対応がおろそかになったり、講師が萎縮してはよくないと思います。

でも、私は確信しています。
ネガティブな人こそ ”宝” だと。

思えば、私も会社員時代の社内研修中はたいてい不機嫌でした。それは、会社に対して不満や言いたいことがいっぱいあったからでした。

また、仕事ができる人やよく勉強している人もたいてい研修中は不機嫌でした。「そんなことはわかっているよ」と。

なので、気になった人には、私はむしろ積極的に話しかけます。

こわいです。びびります。
でもやってみると、たいてい変化が起こり、こちらも深い学びが得られます。

「ここまでどうですか?」
「大丈夫ですか?具合でも悪いですか?」
「なにか質問とか、気になることはありませんか?」

こんな風に声をかけると、ちょっとびっくりして、そしてちょっとバツが悪そうにもぞもぞし始めます。

「あ、いえ・・・実はちょっと体調が・・」
「さっきのところがよく理解できなくて。」
「いや、先生にどうの、というわけではないんですけどね、そもそも研修の主旨が事前にちゃんと伝わってなくて、それで。」
「これはうちの会社の問題なんですが・・・」

躊躇しながらも、ふと堰を切ったようにしゃべりだす方もいらっしゃいます。
そして、そのあとはみな表情を変えて協力的になります。

・・・ふしぎですよね。

特にマネジャークラスの、厳しそうな雰囲気の方はこれが効きます。

「この研修、お役に立ってますか?いや、ご存知のことばかりで、役に立っていないんじゃないかと思って・・・。」

これはイヤミではなく、私の本心から出た言葉でした。
すると・・・
「いやいや、ちょっといろいろ仕事にあてはめて考えてたら混乱してきてね、たとえばこんなケースはどうなの?」とか
「目からウロコだった!その視点はなかった。」
とかいうこともありますし、

「確かに知っていることは多いけど、うまく言語化ができていなかったので、改めて頭の整理になりました。」
ということも。

最後の方は、研修後「先生に申し訳なかった」と、学んだことを自分の言葉で整理しなおして、部下にも説明できる資料を作ったといって送ってくださいました。

また、こんな風に直接話しかけなくても、ネガティブ全開だった方が、グループワークなどで発言した時などに一言、褒めるのも効果的です。なぜなら、頭が良くて鋭い意見をいう人も多いからです。

「そのアイディア、誰が出したんですか?すごくいいですね!」
「まとめるの上手ですね!」

すると「でしょ?!」と笑顔になって、その後、積極的に参加し始めたりします。
自分でも、仕事はできるけれどすぐに人と打ち解けられないこともわかっていて、なにか打ち解けるキッカケを待っていたようにも見えます。

私が思うのは、
研修中に不機嫌なのは、ほとんどの場合、講師に対する不満なのではなく、

会社への不満、職場への不満、自分への苛立ちであることがほとんどです。それはまさしく、その組織の課題そのものです。

組織への不満と、「自分は認めてもらっていない」という憤りの気持ちや「本当は自信がない」という焦りの気持ちがからみあい、中にはそれが長い年月の中で澱のように沈んでいることもあります。

それでも、「少なくともこの時間では、自分の意見が尊重された」と感じると、人は積極的になり、協力的になり、場に貢献しようとします。

かつて私が、超不機嫌で参加した研修も、講師もしくは人事の方が気がついて途中で話しかけてくれたら、もしかしたら私はその時点で自分の気持ちを正直に話して、そのあとは協力的に受講したのではないか、と振り返っても思います。(わからんけど)

あの経験を私は活かして、これからもネガティブな受講者を見捨てず、果敢にツッコミを入れていきます!