新型コロナの影響で研修の中止や延期が続く中、新入社員研修をはじめ、研修をオンラインで実施しようという動きもどんどん出てきています。弊社も相談や実験を重ねてきて、5月からはいよいよオンラインでの人材開発・組織開発が本格稼働します。新たなチャレンジにドキドキしているところです。
実験をする中で面白い気づきがあったので今日はそのことについて書いてみたいと思います。
オンライン化の実験で若手がイキイキ?!
4月の初めのこと、ある会社にて、オンラインツール(この時はzoom)の使い方を教えつつ研修の実験をやることになりました。
研修担当の部署全員=部長から若手メンバーまで、zoomを一度も使ったことがないということで、この時だけはその会社に伺いました。
基本操作や注意点、検討や準備が必要な点を整理してお伝えした後、実際にzoom研修の実験を行いました。参加したのは社内の研修講師1名、サポート1名(zoomの設定をしたり参加者の様子を見たりする役割)、受講者4名です。
講師役もサポート役も受講者役も慣れていないので、それぞれにアドバイスしながら進めるのはどれだけ大変だろうか、今日終わるのだろうかと心配に。ところが、やってみたら想定の時間より早く終わってしまいました。
あっという間に若手メンバー(20ー30代)がzoomの使い方を習得し、私が知っていること以上の工夫をし始め、楽しそうにワイワイやり始めたので、お任せして早々に退散することにしたからです。
ブレイクアウトルーム機能をさっさと覚えて使いこなす
ご存知の方も多いと思いますが、zoomには、大勢の参加者をグループに分けることのできる「ブレイクアウトルーム」という機能があります。
この機能をオンにする設定や詳細の設定がややこしく、さらに「ホスト役」でないとこの機能を使うことができないため、講師もサポートメンバーもこの機能を使えるようにするには「共同ホストの設定」などが必要になってきます。
この説明がややこしいなあ、と思っていたところ、若手同士でいろんなパターンをやりながら「この場合はこうなるのか!じゃ、この場合はどうなるんだろう?」と勝手に習得をして、私より理解をしていました。
部長は、というと・・・「俺わかんないから任せた!」と言って別の会議に行ってしまいました(笑)
リアルの「思い込み」がなく新しいアイディアを出す
オンラインで研修をやる際、受講者は「マイクOFF」で参加をすることが基本となります。受講者の自宅の音を拾うことやハウリングを防止するためです。
しかし、受講者側からも「聞こえない」「わからない」「質問がある」などの意思表明が必要な時もあります。この際の対応として、チャットに書き込むとかマイクONにするとかいろいろあるわけなんですが、私が以前参加したある会では、
A4用紙にマジックで大きく「聞こえません」と書いて画面に映す
ということをやっていて「なるほど!」と思ったのでそれをお伝えしてやってみることにしました。ところが実際に実験してみると、若手がやったのは、
小さな付箋にボールペンで『聞こえません』と書いて画面に映す
でした。お分かりでしょうか?
A4用紙に大きくマジックで書く、というのは、リアルで会議室で実施している際に必要なことであって、オンラインならば小さい紙に普通の大きさで書いてカメラの前に差し出せば大きく映るのです!いかに私たちがリアルの場の思い込みに囚われていたか、よくわかる出来事でした。
小さく書いても大きく映せる・・・!
新しい機器やガジェットに詳しい
ふとみると若手の一人がヘッドセットをつけて参加していました。
「これ、ゲーム用なんですけど締め付けもなく長時間していられます。音もいいしマイクもついているので講師はこれ使うといいと思います。今、リモートワークの流れでヘッドフォンが売り切れてるんですけど、ゲーム用ならまだあります。まあ会社でこれつけていたら、お前ゲームしてんのか!って思われちゃいますけど笑。」
いやいや、私にはゲーム用かどうかすらわからないけども・・・・
見ると、若手のみなさんはカメラも工夫している様子。カメラをこうすると良い、マイクはこうすると良い、これ買おうよ、などと本当に楽しそうに若手同士で話していました。
すぐ飽きてLINEを始める
研修の実験の途中で、講師の説明が延々と続く場面がありました。オンラインでは特にこういう場面を極力なくした方が良いのです。
「今、飽きていませんか?」と受講者役のみんなにzoomのチャット機能を使って確認してみると
「はい、ちょうどメンバー同士でも飽きてきたねってLINEしてたところです。ここは飽きないように工夫した方がいいです。」との返事。講師側からは受講者は真面目に受講しているように見えているのですが、実は顔だけカメラに向けてLINEしている・・・こんなことも若手に参加してもらうとよくわかります。
そして、「受講者が飽きてるな、と思ったらサポートメンバーが横から入って誰かを指名して意見を聞けば良いのでは?」など意見がポンポン出てきていました。頼もしい限りです!
そんな中での部長の役割は・・・
普段は部長に怒られたり、厳しい指導を受けたりしている若手メンバーが突如イキイキしてワイワイとやっているのを見て、「俺わかんねえよー」と言っていた部長はどうしたかというと・・・
総務の役員をその場に連れてきたのでした。役員は実験の様子を見て、「よし!これで行こう!」と言い、その日のうちに部長から「オンラインで研修をやります」という案内が出され、当然、必要な備品も買い揃えることになりました。
若手メンバーがイキイキとチャレンジして試行錯誤して意見を出す、
年長者(マネジャー)はそれをみてスピーディーに決断し、上に通し、必要なお金を取ってくる。
と書いてしまうと当たり前かもしれませんが、実際の仕事はなかなかこうはなっていないはず。
オンライン研修の実験を通じて、リモートワーク推進・オンライン化という今の流れは、若手の強みの発揮に繋がり、すなわちそれぞれの強みや立場を活かす良いチームづくりのキッカケになるのではないか?と思ったのでした。
さっさとお役目終了!とばかりにその場を退散したおばさんの私は、ちょっと寂しくもあり、頼もしく嬉しくもあり。マネジャーの皆さんからメンバーに任せるときはちょっと寂しい、とよく聞きますが、こんな心情なのでしょうね。
この話を他の会社の人材開発部の方にお話ししたところ、
「うちではチームリーダー(係長クラス)がこういうことに強い世代。リアルでなくてもメンバーとコミュニケーションできる、マネジメントできる、って気づいて会社をひっぱっていく存在にしたい。オンラインでの新任チームリーダー研修にそういうコンテンツも入れたい。」とのことでした。
リモート推進を若手の力の発揮の場になるか?いや、しよう!
そしてそれができるかどうかは年長者のマネジャーにかかっています。ぜひチャンスと捉えて新たなチャレンジを!