私(弊社)は人材開発・組織開発の仕事しています。
人材開発とは:「人」を「開発する」こと
つまり、組織の目標を達成するために、「組織のメンバー個人」に働きかけ、必要な知識・スキル・マインド等を獲得させて、人と組織の変化を導くこと
組織開発とは:「組織」を「開発する」こと
つまり、組織の目標を達成するために、「組織のメンバーの関係性」に意図的に働きかけ、組織と人の変化を導くこと
前者は、組織の個人を導くための研修を例としてイメージいただければと思います。
後者は、組織全体での対話や、日々のさまざまなレベルでのコミュニケーション等を行い、必要なら仕組みとし、職場単位で変化が起こるようなことをイメージいただければと思います。
とはいえ、目的はどちらも「組織の目標を達成するために」「人と組織の変化を導く取り組み」であり、明確に線引きできない取り組みも多く存在します。
人材開発をやっているという人は研修講師もふくめたくさんいますが、組織開発を本当に理解して実践している人というのはまだまだ少ないように思います。私も、日々実践と学びを通じて組織開発への理解を深めている最中なのでエラそうなことは言えないのですが、日頃、同業の方や人事の方から、「組織開発やりたいんですが、どうしたらできるようになりますか?」とか「そもそも人材開発の前に、組織開発がなされていることがベストですよね!」などと色々な疑問や意見を聞くことが多いので、私の思いを書くことにしました。
最初のタイトルに関する答えは、「どっちが先もどっちが重要もないよ。目的に対して効果があることをやるのみだよ。」ということ。
私の師である立教大学教授の中原淳氏もfacebookでこう言っています。
ーーーー
「組織開発と人材開発、どちらが重要なのか?」という問いは「愚問」です。「愚問は、頭を悪くする」から、考えない方がいいよ。その問いは「道具のよしあし」を問題にしている。
それより重要なのは「何の課題」を解決し、「何を目的とするか」だよ。自分自身の抱える「目的と課題」に応じて、最適な「道具」は選べばいい。
ーーーー
その通りだと思います。
「うちの会社で組織開発をやりたいんです!」とか「弊社は組織開発専門の会社です!」と聞くといつも超絶違和感を感じてしまうのはこのためです。
ではなぜ、こんな疑問が生まれるのでしょうか。
ひとつには、「組織開発」と「人材開発」という言葉が分かれているから、ということがありそうです。
言葉が分かれていると、人は、別のものと認識し、対立させたり、優劣や順位をつけたりしがちです。だからまず、言葉に惑わされていはいけないと思います。
しかし一方で、言葉が分かれているからこそ、私たちはそれぞれを深く認識し、学ぶことができるということも知っておく必要があります。
・・・なんていうことを私の経験から述べます。
「組織開発」という言葉を知らなかったからこそできたこと
私は10年前にコーチングを学んだことをきっかけに「人材開発」の世界に入りました。最初の入口はビジネスパーソン(特に営業パーソンとそのマネジャー)向けの、個人を相手にした継続的なコーチングでした。そこから次第に企業からの仕事が入るようになり、個人向けのコーチングを、効率的に組織内で行うにはどうしたらいいか?」ということを考えるようになりました。
そして当時私は、大変お恥ずかしいながら「組織開発」という言葉は全く知りませんでした。(本当に今思うと恥ずかしい!!!)
個人にコーチングを行ったときに出るような効果を、集団に対して行うにはどうしたらいいか?と考えた時に
そんなことをやっているうちに、「組織の中では、人は一人では変われない」ということに気づきました。
「若手が自発的にイキイキ発言するようにしてほしい」
「女性が活躍できるように積極性を持つようにしてほしい」
企業からはいろんな要望が寄せられますが、彼ら・彼女らに対して変わるように働きかけて変わりかけても、戻るところがいつもの職場では、なかなか変化が起きにくいのです。
そこで、
ヒアリングやアンケートでは本音が出ずらいこともありますし、心の奥底にある「潜在意識」のようなものまでは把握できません。
そこで、
そんなことをするうち、
若手社員の上司に、女性社員の上司に、あるいは部署全員に、あるいは人材部門に、必要なら組織のトップに、誰にどう働きかけ、どんな情報をインプットし、どことどこの関係を変えると何が変わって、最終的に起こしたい変化が起こせるのか、あの手この手で取り組むようになりました。人材開発・組織開発という考え方の違いは、そこにはありませんでした。
ある時、こうやっていろんな関わり方を組み合わせてやっていくと、どうしてこんなに成果が出るんだろう?と思って、中原教授の門を叩いたところ「これはまさしく組織開発です!」とお墨付き?!を頂いたわけです。その時は軽いショックを受けました。私が現場で効果がでると思ってやっていたことが、アカデミックな世界ではすでにある程度確立されていたということに!だったらもっと早く勉強しておけば良かった!ずいぶん遠回りをしてしまった!と凹みました・・・。
でも、今、「組織開発ってどうやればできるようになるんですか?」「まだ私がやっていることは人材開発どまりです・・・」「やっぱり組織開発があっての、人材開発ですよね!」という言葉を聞くにつれ、振り返って私は、「組織開発」という言葉を先に知らなくて良かったのかも?!と思うようになりました。
私はずっと、ただひたすら「組織の中の”人”に関わる問題解決のお手伝い」をしていると思っていました。 もし最初の段階で私が「人材開発・組織開発」という言葉を知っていたら、「私はコーチングが専門で、人材開発をやる人だから、組織への働きかけはしない」と、自分のやることを制限してしまったかもしれません。組織開発ってなんだかわかりにくくて難しいなあ、と敬遠してしまったかもしれません。
知らなかったからこそ、「こんな変化を起こしたい」というクライアントの目的に対して、どうしたらその変化を起こせるか?どうしたらその変化が元に戻らないで実際の職場で継続できるか?ということに着目して、あの手・この手でさまざまな関わりをしていったのだと思います。もっといえば、「人材開発・組織開発」の範疇を超えた提案や取り組みも必要とあれば行っています。
今、「どうしたら組織開発ができるのか?」「どちらを先に行えばいいのか?」と思っている方で、すでに「組織開発」という言葉を先に知ってしまったならば、クライアントあるいは自組織の現場を見る際には、「人材開発」「組織開発」の言葉はいったん忘れ、純粋に、今目の前の職場で何が起こっており、それはなぜなのか、ということを自分の目で見て、想像をめぐらせ、何ができるのかを考え抜くことから始めたら良いのではないかと強く思います!!!
(↑今や組織開発という言葉を知ってしまった自分に対しても言っています)
とはいえ、「組織開発」という言葉を知ったからこそできたこともあります。
長くなるので続きます!