ある会社の取り組みが4月からスタートし、その第1回目から面白いことが起こったので、今日はそのことをブログに書いてみたいと思います!

体制変更と女性マネジャー誕生をきっかけにプロジェクトスタート

とある会社にて。体制変更のあった営業本部で、8ヶ月間の人材開発・組織開発の取り組みをスタートさせました。

ここは社内でも大きな売上を占める部署。ここに配属されるとどんなトップセールスの方でも全社を背負うというプレッシャーに潰されそうになります。また、これまでは「一人で」営業して数字を上げればよかったのが、本部内の企画チームやスタッフ部門とも連携しながら「チームで」仕事を進める必要が出てきて仕事の進め方がガラッと変わります。このスタイルに慣れるまで1年間くらい大変な思いをすることになります。

この営業本部の体制が変更となり、マネジャーの担当が変わり、初の女性マネジャーやキャリア採用のマネジャーが誕生したり、メンバーも入れ替わることとなりました。
「新マネジャー・新メンバーが早くこの組織になじみ、かつ、新体制をうまく軌道に乗せるにはどうしたらいいか」という相談を受け、プロジェクトを実施することになりました。

話を聞いて私は、「女性マネジャーなど新メンバー受け入れを『きっかけ』にして、この本部でのマネジャー同士の対話のあり方がまず変わり、それがメンバー全体にも波及して、新体制が早く機能するようになるといいなっ」と思い、プロジェクトの概要を固めました。

今、大学院(人材開発・組織開発専攻)で学んでいることも総動員。4月の第1回目は、本部長・部長・課長というマネジャー陣同士が、「ひたすら自己紹介しあう」ということをやってみました。

え?!自己紹介?

まずはとことん自己紹介

まずは、自己紹介を大切さを伝えました。

実話に基づいた小説「なぜ会社は変われないのかー危機突破の風土改革ドラマ」(柴田昌治著 日経人文庫)の中で、会社を変革する最初の取り組みとして、ひと癖もふた癖もある「偉い人たち」が合宿をし、時間制限なしで夜中まで自己紹介しあう、という場面があります。自己紹介で語られたことの中から、自己への気づき、他者への気づきが生まれ、チーム意識が芽生え、組織の変革へと向かう。そんな話が書かれています。

私自身も、昨年大学院でたくさんのグループワークをやりました。グループメンバーが顔を合わせた一番初めに、しっかり時間をかけてお互いを知るための自己紹介をしてから向かう方向を決めたグループは、全員が楽しみながら没頭し、最終的に良い結果を出す、という経験をしました。

ところが組織では多くの場合、その大切なプロセスをはしょり、問題解決・業務遂行に走ります。すると途中で決裂して問題の本質にたどり着けなかったり、一人が暴走して全員の納得感のないままに進んでいく、ということが起こるのです。

さて、このプロジェクトで本部長・部長・課長たちの自己紹介はどんなふうに行われたか。

「自己紹介やりますねー」と言うと、もう何年もこの部署にいるマネジャーたちは「いやあ、毎週飲みにいってるから、自己紹介って言っても・・・全部知ってるよなあ!」と笑っていました。自己紹介の中盤でも「今のところ、特に目新しい情報がないなあ」と。自己紹介、時間のムダだったかなあ、とこの時は思いました。

話しているうちに話題は未来へ向かう

徐々に私の方から深い質問をしていきました。(事前課題として以下のようないくつかの質問について考えてきていただいていました)

・この部署に異動になった最初の1年間、どんなことに悩み、どう乗り越えた?
・この部署でのやりがいは?
・課長に昇進した時、メンバー時代と変えたことは?
・部長に昇進した時、課長時代と変えたことは?
・今みんなに知っておいて欲しい自分のことは?
 などなど、10項目ほど
(これらの質問をどのように考えたか、背景にある理論や現場感覚など、詳しく知りたい方はご連絡ください)

すると、マネジャーひとりひとりのいろんな経験、思い、メッセージが出てきて、みんな真剣に話を聞き始めました。

そのうちに自然と、本当に自然と、
「この部署をこんな部署にしたいと思う」とか
「メンバーをこんな風に育成していきたいと思う」とか
「自分がまずは仕事を楽しんでいる姿を見せる、そんな存在でありたい」など、
語られる言葉が未来へと向かっていきました!おー。

そして最後にみんなが気づいたことは・・・

自己紹介を終えて、今、みんなが何を感じているかを聞いてみました。

「毎週飲みに行っているから全部知っている」と最初に語った部長が言いました。

「えっと・・・もしかして、自分はこれまで、一緒に酒を飲んでるからってわかったつもりになっていたんじゃないか、もっと、昼間の、こういう『明るい時間』に、ちゃんと、コミュニケーションを取らないといけないんじゃないかって・・・」

それまで黙っていた本部長が勢いよく割り込んできました。

「俺もそう思ったんだよ!!!いや、酒を飲んでる時ってさ、結局、くだらない話の時間も結構あるしさ、大事な話しても次の日忘れてたりしてさ、いや、もちろん、そういう時間も大切なんだよ、だけど、もっと『明るい時間』にさ、話をしないとさ、そりゃみんな忙しいかもしれないけど・・・」

「明るい時間」のところで笑いが起こりました。いい感じです。

課長も入ってきました。
「最近、リモートワークが続いて全員が集まる時間がなくなったから、あえてオンラインで、メンバー全員で話す時間を1時間取ったんですよ。そしたら1時間で終わらなくなって、時間になってもみんなどんどん話すんですよ。みんな忙しいから申し訳ないと思って、さっと終えるつもりだったんですけど、全然終わらなくって。意外とみんな聞いて欲しいことあるんだなあって思ったんですよ。」

本部長がさらに加えました。
「僕らはこれまで、酒の場に逃げていたのかも知れない。」

みんな、その言葉に納得の様子でした。
そしてそれからは、それぞれが部下であるメンバーと、「業務時間中に」1on1をやろうという話になり、部下と付き合いが長かったとしてもちゃんと自己紹介をしあおうと決まり、その日は終わりました。

まずは明るい時間のコミュニケーションを大切にすることから

折しも今週から緊急事態宣言。実際、飲みにいくこともできなくなってしまいましたね・・・。(涙)

もちろん、酒を飲みながら語ることや、くだらない話で盛り上がることも必要です。私もそういう時間は大好きです。人生に必要な時間だと思っています。

でも、それだけで本当に深い、お互いの本当の思いを知り未来を作り出すようなコミュニケーションができるでしょうか。また、それでメンバー全員と話せていたのでしょうか。夜の時間が使えない子育て中の方、身内の介護が必要な方、勉強中の方などもたくさんいらっしゃるはずです。

実はあるマネージャーが途中でぽろっとこう言ったのです。「実は、そろそろ親の介護が必要なんだよね・・・」

今の時代、酒の席ではなく、業務時間中にメンバーとコミュニケーションを取る方がいいのではないか、ということは、おそらく、全員うっすら頭ではわかっていたのではないでしょうか。でも、実際に「自己紹介」をやってみて「相手のことを知らなかった!」と自分が強烈に体感するまでは肚落ちしないし、ましてや、「飲み文化」の長い歴史のある組織の中ではとても言い出せなかったのではないか。そんな風にも思いました。

そして、とことん自己紹介するだけの対話がいかにパワフルか、改めて感じました。

さて、まだ1回目。
体制変更をきっかけにした新しいチーム作りへのチャレンジが始まります。