1on1を行うということはマネジメントスタイルを変えるということ

しばらく1on1について、書いていきます。(たぶん。)

さて、1on1全社導入の構想づくりや調査、研修の企画・実施・効果検証、1on1に関わる制度面へのアドバイスなどを5年ほど行い、たくさん現場をみてきました。

ちなみに、ここでは1on1とは、
「部下の成長と生産性の向上のため、上司と部下が1対1で、定期的にミーティングを行い、部下の振り返りを促すこと」
としています。

ちまたでは、「1on1をやるぞ!なんでも言っていいぞ!」と言われて、ここぞとばかりに思ったことを言うと、逆に上司から説教されたり上司の持論を展開される、という「1on1もどき」もたくさんあふれているようですが(泣)、そういうのは 1on1ではありません!

1on1をやるということは、これまでの指示型のマネジメントから、部下の話を聴いて能力と意欲を引き出すコーチング型へのマネジメントの大転換なのです・・・!(ここ、本当にわかって!)

そして、人事部門としては、社員のために良いことだから全員1on1をやってほしい、という願いを込めて「全社導入」とするわけですが、これには良い面もあれば、良くない面もあります。

その一つが「1on1バブル」です。

1on1実施率が実態よりも上がる「1on1バブル」

全社導入となると、たいてい、というか必ず、実施状況の調査が定期的に行われることになります。すると現場では、少なからずこんなことが起こります。

「1回しかやってないけどやったことにしておくか!」
「3ヶ月に1回程度、不定期にしかやってないけど、月1ってことにしとくか!」
「部下のうち1人としかやってないけど、部下ごとに聞かれてるわけじゃないから、やったと答えておこう」

部下側にアンケートを取れば実態がわかるじゃないか、と思われるかもしれませんが、ここにもいろいろあります。
「そもそも1on1やってないからアンケートは無視」→未回答を除いた実施率が上がる
「やったことにしておけよ、と上司から言われるのでとりあえずやったことにしておくか・・・」
「アンケートの直前だけ上司が1on1をやるので、やったと回答するしかない・・・」

アンケートの結果と現場での実態に乖離があるような気がして、それとなく聞いてみたり、独自にアンケートを取ったりしてみた結果、どうやらこんなことが起こっているように思っています。

先日、とある人事の方が「マネジャーのスケジュールをみると1on1ってたくさん入っているので、弊社ではみんなちゃんとやっています!」とおっしゃっていたのですが、よく聞いてみると、「マネジャーが1on1のスケジュールを守らずキャンセルばかりするので問題になっている人もいます・・・。」とも・・・。「1on1やってる詐欺」発生です!

そして、社内アンケートの結果、「実施率80%」ということになると、やっていない20%のマネジャーが目立ってしまい、この人たちが問題だということになって改善のターゲットとなります。

部署ごとの実施率が比較され、「1on1は効果がある」「1on1はこんなに素晴らしい」との良い回答が発信され、「100%実施せよ」との号令が下り、1on1未実施のマネジャーが呼びつけられたり、ヒアリングを受けたりすることも。

するとますます「とりあえず適当にやって1on1やったことにするインセンティブ」が現場で高まります。こうして相変わらず実施率は実態よりも高くなり、さらにやっていない人に対して圧力がかかることになります。

この「1on1バブル」、導入当初は仕方ないと思いつつ、この悪循環をどこで断ち切ったら良いか。答えは一つではないと思います。常に現場を見ながら、社員の方々の声を聞きながら、さまざまな策を打つ必要があるなー、と思っています。

ちなみに弊社では、会社の状況によってですが、トップへの方々を巻き込んで1on1を一つのツールとして活用したマネジメントを一緒に考えるプロジェクトを実施する、組織開発と融合させる、などの現場との対話的な取り組みを行ったり、しくみとして人事制度に組み込む提案を行ったりしています。

「強制的に」実施することにも意味はある?!

実は、1on1(=上司によるコーチング)を強制的に実施にするとその効果が下がる、ということを指摘する研究者もいます(Beattie et al., 2014)。

しかし私は、強制的に実施、とするからこそ良い面もあると考えています!

例えば、マネジャーの方の中には
「初めは1on1なんて意味あるの?と思っていたけど、実際にやってみたらメンバーがイキイキし始めた。これは今後もずっと必須!」
と気づく人もいます。

メンバーからも
「業務遂行に必要なことは話せていたので必要ないと思っていましたが、定期的に上司と話せる場ができて自分の課題や今後やるべきことがわかって、成長を感じられるようになった。」
という声が上がっているのも事実。強制的に実施にしたことで救われる人もたくさんいるわけです。

現場の方々の声から私なりに考えてみると、強制実施」そのものが悪いのではなく、マネジャーの方が「強制的にやらされている」とネガティブに捉えてシブシブやっていたり、メンバーも「マネジャーと話したくないのに無理やりこの時間を取られるのが嫌」と思ったりしていると、効果が下がるのではないでしょうか。

別の研究では「マネジャーがメンバーの成長の可能性を信じているかどうか、によって1on1(=上司によるコーチング)の効果が変わる」ことが指摘されています(松尾,2015)。

この点には、まだわかっていないことも多く、マネジャー自身がどのような環境でこれまで「育って」きたのか、マネジャー自身が育成について学ぶ機会があったか、1on1について教育を受けているか、マネジャー自身が良い1on1を受けたことがあるか、ということも影響するのではないかと言われています。

現場が「やらされ感」を持たないような人事部門からの発信の仕方や、現場との対話、そもそもの上司ー部下の関係、上司の持つ信念、そしてさまざまな全社施策や制度との関連づけetc・・・

1on1の効果を全社で上げていくには、ただ「やれ」というだけではなく、そういった、たくさんの取り組みが必要です!!!

1on1全社導入や成果アップに向けたご相談、お気軽にどうぞ〜。

(参照)

Beattie, R. S., Kim, S., Hagen, M. S., Egan, T. M., Ellinger, A. D., & Hamlin, R. G. (2014). Managerial coaching: A review of the empirical literature and development of a model to guide future practice. Advances in Developing Human Resources, 16(2), 184-201.

松尾睦. “管理者コーチング研究の現状と課題 (林伸二教授退任記念号).” 青山経営論集= Aoyama journal of business 50.2 (2015): 65-67.